恋はしょうがない。~職員室であなたと~
失恋のかたち
教員の世間は狭いもので、静香も教員ということもあり、古庄が結婚するという噂は、知り合いから知り合いへどこからともなく伝わり、桜野丘高校でも聞かれるようになった。
それが、いつしか生徒の耳へと入る。
有紀がそれを知ったのは、夏休みの前期補習の最終日だった。
「古庄先生が結婚するって、本当ですか……?」
生徒を帰して職員室へと戻る途中、有紀が真琴へと話しかけてきた。
その顔は思いつめて、今にも泣き出しそうだ。
「うん、本当よ。相手の人は、私の友達だから」
「えっ!?相手の人って、どんな人なんですか?」
有紀は悲痛な表情で、真琴へと迫ってくる。
「古庄先生より2つ歳下で、とても綺麗で賢い人よ」
それを聞いて、有紀は消沈して黙り込んだ。
才色兼備で大人の女性には、太刀打ちできないと思ったのだろうか。
とぼとぼと真琴の後を付いて歩いて来ている。
そんな有紀を見て、真琴は自分を映す鏡を見ているようだった。
「先生は、古庄先生の結婚式に出るんですか?」
そう尋ねられて、真琴は振り返った。この話題で、朗らかな顔をするのはとても難しい。
「うん、新婦さんの方から招待されてたんだけど、残念ながら他の用事があって行けないの」