恋はしょうがない。~職員室であなたと~
 
 
 
「うん、いると思う。有紀ちゃんのことを世界で一番に想ってくれる人。今度はそんな人を好きになろうね……」


有紀に語りかけながら、真琴は自分にもそう言い聞かせていた。


でも、それは、自分には無理だと分かっている。

自分の人生の中で、古庄以上に想える人はもう現れないだろうし、あの時の古庄ほど、自分のことを求めてくれる人も現れないだろうと。


何よりも、古庄は自分に、こんなにも人を好きなれるということを教えてくれた――。


だから、真琴はこの想いを抱えて、古庄と静香が幸せな家庭を築くのを遠くから見守りながら、独りで生きていこうと思った。


この想いは真琴の中では、まぎれもない真実だから。

それを否定したまま、生きていくことはできなかった。



有紀の肩を抱えながら、真琴は涙をにじませた目を上げた。



見上げた夏の空は、吸い込まれるようにどこまでも青く――。


古庄を想う真琴の心も、同じように澄んでいくのが分かった。

 
 
 
 
 

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