恋はしょうがない。~職員室であなたと~
 

 
きっと古庄は、静香を傷つけただろう。
いや、傷つける原因を作ったのは、自分だ。


古庄と出逢わなければよかった――。

仕事の都合上、出会いが不可避なものだったのなら、出会った当初の素っ気ない態度を貫いていればよかった。

そうしていれば、古庄も自分に嫌われていると思い込んだまま、静香と結婚したはずだ。



メールや電話で静香から連絡がないのは、古庄がすべてを静香に打ち明けてしまい、静香が自分を恨んでいるからではないか……。


そこまで思いが及ぶと、居ても立ってもいられなくなり、静香との共通の友人へと連絡を取った。


「何があったんだろうね。でも出会ってすぐに結婚を決めたじゃない?諸々の問題が、直前になって明るみになったっていうか……」


その友人も詳しいことは知らないらしく、推測でしかないことをいろいろと話しはしたが、静香の本当の気持ちは本人に聞くしかなかった。


真琴は静香にメールを打とうかと、手を動かしかけたが……


静香にとって自分は、



〝後から出てきて婚約者を横取りした女〟



だと思い、やはり途中で怖くなってメールを送るのをやめた。


友人である分、裏切られた思いが先に立ち、きっと恨みは深い。

今はダメだ……と、真琴は思った。


もう少し、2,3ヶ月経って今の状況が落ち着かないと、静香の耳に自分の本当の気持ちは届かないだろう。 



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