恋はしょうがない。~職員室であなたと~
真相は、古庄の方に訊くしかない。
後期の補習が始まって、生徒たちが帰宅した午後に、真琴は行動を起こした。
「地歴公民科の資料室の整理をしてきます」
と古庄に告げて、職員室の席を立った。
資料室のドアを開けた瞬間、ムッとした熱気が立ち込める。
真琴はその熱気を突っ切って、反対側の窓を開け、風を入れた。
普段、誰も使わないこの資料室は、ただの物置と化している。
真琴は一つ息を吐き、段ボールに入ったまま山と積まれた教科書や図説、問題集の見本の整理に取りかかった。
問題集の見本だけが、科目別に仕分けされているのに気がついて、真琴は中間考査の前日の出来事を思い出した。
あの時、古庄はすぐに機転を利かせて、ここの問題集を持ってきてくれた……。
思いやりのある人で、他人に酷いことのできる人ではない。
だからこそ、好きになった――。
古庄に想いを馳せて、真琴の目頭がジワリと熱くなって来た時、古庄が資料室の戸口に立っていた。
「暑っい上に、埃くさいなぁ」
そう言いながら、古庄は壁際に並べて掛けられている地理の授業用の大きな地図の軸を確認し始めた。
真琴はそれには答えず、チラリと古庄を見遣りながら、自分がしていた作業の手は休めなかった。