恋はしょうがない。~職員室であなたと~
その言葉を聞いて、真琴は可笑しそうに笑顔になった。
薄暗闇の中に浮かぶそれに、古庄は見とれて言葉を潰えさせた。
「大丈夫です。もう逃げたりしませんから」
そう言われて、古庄も極上の笑みを真琴に捧げてくれる。
古庄のような男にここまで想われて、どうして他の男性に心を奪われることがあるだろうか。
どうしてその傍を離れたいなどと思うだろうか。
真琴は自分の心に素直になって、真っ直ぐな瞳で古庄を見つめられるようになった。
古庄と微笑みを交わしながら、真琴が不意に気が付いた。
「あっ!7時半になります!オートロックが!!」
古庄も目を剥いて我に返り、急いで職員室のドアを閉めた。
二人で階段を駆け下りながら、古庄が口を開く。
「また二人で缶詰めになるのも悪くないな」
「またカップラーメンを泥棒して食べるのなんて、まっぴらです」
真琴が靴を履き替えながらそう返すと、古庄は声を立てて笑った。
「じゃあ、これから食事に行こう。腹も減ったし」
「いいですよ。同僚としてなら……ね」
オートロックの施錠前に、滑り込みで外に出られた二人は、ひとまず息を吐いた。
「もちろん。同僚として……だ」
古庄がそう言って眉を動かすと、真琴は小さな笑いをもらし、並んで歩き出した。
校門を出るとき、その横に根を下ろすしだれ桜の枝が、真琴の頬に触れた。
二人の中に、何よりも大切な想いを目覚めさせてくれたこの桜――。
二人で想いをこめて、その梢を見上げると………、
街灯に照らし出されたその枝は、葉の色を淡く黄色に変え始めていた……。
恋はしょうがない。
[ 完 ]
次ページのあとがきも、是非お読みください!
続編の「恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜」も短編です。1年後には、「えっ!」と驚く展開が待っています。1年後の二人がどうなるのか……、是非読んでみてください!
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この作品は、マカロン文庫より電子書籍化されています。
書籍化に合わせて本編の見直しをし、かなり加筆をしています。古庄と真琴の教科に関するエピソード、古庄のラグビーをするシーン、真琴と静香のやり取りのシーンなどを加え、ラストももっと余韻が出るように変えています。その他随所に改良を加えて読みやすく、より共感できる、よりドキドキ感と切なさが強まった厚みのある作品に生まれ変わってます。
是非、読んでみて下さい!!(タイトルは「恋はしょうがない。〜職員室であなたと〜」です)
ご購入は、表紙または次ページにあるリンクよりどうぞ!!
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