恋はしょうがない。~職員室であなたと~
家庭訪問から学校へと戻ってきたときには、6時半を回っていた。
明るく光を放つ職員室も、教員たちはずいぶんと帰宅していて、その灯りの暖かさとは対照的に閑散としていた。
真琴の机の所に、一人の男性が立っている。
――あの、ジャージ姿…!
着任した日、あのしだれ桜の下にいた人物だと、真琴は直感する。
その人物が立ち去らないうちに、正体を確かめようと、急ぎ足で自分の机へと急いだ。
「お!お疲れさん」
ジャージ姿の男の方から、真琴へと声をかけてきた。
思いがけないことに、真琴は立ちすくんで目を見張る。
何か返さなければ不自然なので、真琴は焦って言葉を探した。
「…古庄先生、サッカー部の顧問だったんですか?」
普通に「お疲れ様です」と答えれば良かったものを、真琴の口をついて出てきたのは、突拍子もない問いだった。
「俺は、ラグビー部の顧問だよ。ラグビーは“男を磨くスポーツ”なんだ。あんなチャラチャラしたサッカーと一緒にしてほしくないな~」
と、古庄は腰に手を当てて、笑いを含ませて答えた。