蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
瞬間。
フワリ――。
アルコールの匂いと、それよりも濃厚な甘い花の香りが鼻腔をくすぐり、藍は思わず動きを止めた。
甘い――、おそらくはバラの花の匂い。
香水だろうか?
それは藍に、大人の女性を連想させた。
ドキン、と大きな音を立てて鼓動が跳ねる。
『どうせ、綺麗なお姉ちゃんにお酌をされて、鼻の下を伸ばしているに決まっているんだから』
クリスマス・パーティの時に言ってた美奈のセリフが、藍の脳内を駆けめぐる。
とても強い香水を付けている女性が隣に座ったのかもしれない。
でも、それだけで、こんなに香りが移るものだろうか?
相反する思いが交錯し、ドキドキと鼓動が早まっていく。
胸の奥に生まれた、モヤモヤとした感情。
これは、いったい何?