蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

気が付くと、拓郎の身体の上に倒れ込んでいる自分がいた。目の前にはネクタイの結び目がある。


「し、芝崎さん!?」


顔を上げて、頭一つ分上にある拓郎の顔をどぎまぎと見上げると、目は伏せられているし規則正しい寝息も聞こえた。


完璧に、熟睡モードに見える。


――寝ぼけている……の?


寝ぼけているにしろ、いないにしろ、人一人が上に乗っかっていたら、かなり重いはず。


藍は、とにかくこの状況から脱出しようと身じろぎしたが、拓郎に腰と背中を両手で抱え込まれていて、全く動けない。


正に、人間抱き枕状態だ。


でも、まさかこのまま、朝までこの格好で居るわけにはいかない。


起こすのは気の毒だけど、こうなれば、起きて貰うしかない。


「芝崎さん、芝崎さんっ!」


動けないまま、必死に名を呼ぶが、拓郎は一向に目覚めない。


どうしよう……。

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