蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
何だろう、この香り。
香水みたいに強い匂いじゃない。
微かな、ほんのりと甘くて優しい香り。
どこかで、嗅いだような気がする……。
「くしゅんっ」
すぐ耳元で上がった可愛らしいくしゃみの音に、拓郎は珍しく寝ぼけもせずにパチリと目を開けた。
目の前には、柔らかそうな色素の薄い栗色の髪が、カーテンの隙間から差し込む朝日に照らされて、金色に縁取られているのが見えた。
ああ、この甘い香りは、シャンプーか……。
……シャンプー?
って、誰の?
拓郎は、まるでゼンマイ仕掛けのロボットのように、自分がしっかり抱え込んでいるものに、ゆっくりと視線を這わせた。