蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
7 【恋人未満】
年も明けた1月1日。
今年も何か良いことが有りそうだと思わせるような、気持ちの良い快晴の下、拓郎と藍は、アパートの大家でもある佐藤家を訪れていた。
『お正月だから、お昼におせち料理を食べに来なさい』と君恵に誘われたのだ。
「明けましておめでとうございます」
「はい、おめでとうございます。今年も宜しくお願いね」
玄関先に迎えに出た着物姿の君恵に、型どおりの新年の挨拶をすませて、いつもの居間に通された二人は、部屋に入るなり君恵の長女・美奈に、頭のてっぺんからつま先までしげしげと観察されてしまった。
正月とは言っても、拓郎はいつもと変わらずジーンズにセーターというラフな格好で、藍にしても同じくジーンズにセーター姿だ。
見ようによっては、ペアルックに見えなくもない。
「ふうん……」
二人の間に漂う、微妙な雰囲気。
まあ、主に変わったのは拓郎の態度なのだが、美奈には一目見て「何かあったな」と、ピンと来てしまった。
ショートボブの黒髪に、猫を思わせる少しつり加減の大きな瞳。女性らしいグラマーなスタイル。
母性を感じさせる豊かな胸の前で腕組みをすると、美奈はニコニコと満面の笑みを浮かべた。