蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
あのクリスマスの後。
身から出たさびで、一人、風邪を引いてしまった拓郎は、3日ほど仕事を休んで部屋で寝込んでいた。
あれは、3日目の夜だった。
大分体調も良くなって、普通に夕飯を食べた後、久々にTVドラマをのんびりと見ていた。
勿論、藍も一緒だ。
内容は、クリスマス特番の高校生が主人公の恋愛ドラマの再放送だったのだが、これがいけなかった。
誤解や曲解、親友の裏切り、親の離婚。
王道過ぎる展開ではあったが、それなりにドラマは盛り上がり、いよいよクライマックス。
街頭に飾られた大きなクリスマスツリーの前で、主人公の女の子が涙に濡れながら男の子に告白をする。
「あなたが好きなの。ずっと好きだったの。愛してるのっ!」
「俺も、ずっとお前が好きだった。始めて会ったときから……」
見つめ合う、二人。
出会いからの出来事が、二人の胸の奥に去来する。
初めての口づけ。交わされる抱擁――。
やっと告白できた彼女にクリスマスの奇跡が訪れた。
フワリ。
今年始めて降る雪が、二人を包むかのように、舞い落ちる。