蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

で。


ここで『めでたしめでたし』と、物語が終わったなら、宣伝通りの純愛ストーリーだった。


が、どっこい、ここからが急展開。


甘いメロディーが流れて画面が切り替わり、ホテルの一室でラブシーンが繰り広げられ始めた。


一糸纏わぬ姿で抱き合う恋人達。


――告っていきなりそう来るわけか。


純愛ストーリーと言う触れ込みだったから、まさかこう言うあられも無いラブシーンがあるとは思わなかった。


クリスマスの夜のことがあり、かなり気まずい。


藍の様子が気になり、拓郎がコーヒーカップを口に運びながら、藍の横顔にチラリと視線を走らせたときだった。


「芝崎さん、聞いても良いですか?」


不意に名を呼ばれ、拓郎は内心ドキリとした。


「なに?」


と、何気ない風を装って、再びコーヒーを口に運ぶ。


「芝崎さんは、セックスしたいと思ったりしないんですか?」


一秒後。


拓郎は、口に含んでいたコーヒーを勢いよく吹き出した。逆流したブラック・コーヒーが鼻と気管を直撃して、激しくむせ返る。


な、な、なんて言った、今!?

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