蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
正直な気持ちを言えば、拓郎は藍に対して、最初の『保護者的な気持ち』とは違う感情を抱いていた。
それは間違いなく、男としての拓郎が女としての藍に対する愛情だ。
クリスマスの夜の一件も、酒の力が大分入ってはいたが、根本はその気持ちの発露だったのだ。
でも、相手は十も年下の十七才の女の子。
そう、女じゃない、まだ少女だ。
拓郎が今まで付き合ってきたような、大人の女ではないのだ。
それは、拓郎が自分の気持ちにブレーキを掛けるだけの、大きな壁になっていた。
憎からず思いを抱いている健康な若い男女が、同じ屋根の下に住んでいて性的関係を持たないのは、普通ならあり得ない状況なのかもしれない。
拓郎だって、他人のそんな話を聞いても、信じないだろう。
それでもやはり。
その壁を簡単に飛び越える事は、拓郎には出来そうも無かった。