蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
大家宅で昼食のおせち料理を堪能した後、藍は君恵と美奈と連れだって、キッチンに『後片付けの手伝い』と言う名の井戸端会議に行ってしまった。
美奈の夫の貴之も、地区の新年会とやらで出掛けてしまい、居間に残されたのは、美奈の娘の恵と拓郎だけになった。
恵は、満腹になってお昼寝モードに突入してしまったので、一人手持ちぶさたの拓郎は、コタツにごろりと横になり、一連の藍の爆弾発言を思い出していた。
クスクスと、溜息混じりの苦笑いを漏らしながら、隣で眠る恵の天下太平な顔にぼんやりと視線を移す。
――いつか俺も、人の親になる時がくるんだろうか?
スヤスヤと安心しきって眠る幼子に、来るかどうかも分からない未来図を重ねている自分にハタと気付いて、拓郎は少しばかり驚いた。
今まで彼女が出来ても、こんな風に考えたことなどただの一度も無かったのだ。
年を取った……と考えるべきか、それとも。
「しょうもない……」
『私の酒が飲めないの?』と、無理矢理美奈に呑まされた日本酒が、少し回ってきたようだ。
クリスマスの時のように無茶な飲み方ではなく、ほろ酔い程度なので、寝ぼけて何かをしでかす心配は無いはずだ――。
自嘲気味な笑いを自分に向けつつ、そのまま気持ちよくウトウトと眠りの中に落ち掛けたその時。
ぺちん!
「わっ!?」
いきなり誰かに頭を叩かれた拓郎は、情けない声を上げて飛び起きた。