蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
嫌われてはいないはずだと思うが、それが異性に対する愛情なのか、それこそ拓郎には分からないのだ。もしかしたら、藍自信にも分かって居ないのかも知れない。
それほどに、藍はまだ幼いのだ。
時間は、いくらでもあるのだから、焦ることはない――。
拓郎は、ともすれば暴走しそうな自分の心に、そう言い聞かせる。
「あ、それはそうと拓郎」
「はい?」
「避妊はキチンとしなさいよね。あんたは子供が居てもおかしい年じゃないけど、さすがに十七やそこらで子持ちになったんじゃ、藍ちゃんに気の毒しちゃうから」
「……美ぃー奈ぁーさーん」
だからなぜ、一足飛びにそう言うことになるんでしょうか!?
拓郎は眉根を寄せて、渋面を作る。
「何よその顔。大事なことじゃない」
「それ、まさか、藍ちゃんにも同じ事言いませんでしたか?」
嫌な予感を覚えつつ、拓郎は震える声を絞り出した。
「うん。言ったわよ♪」
ああ、やっぱり……。
がっくりと、肩の力が抜け落ちる。
「素直で、良い子だよねー藍ちゃん。『はい、分かりました』って、可愛いったらありゃしない。思わず抱きしめたくなっちゃうわ。って、抱きしめて頬ずりしちゃったんだけどね。これがまた、肌触りが、すべすべで、もちもちの、ぷるんぷるんなのよねー♪」
「……よかったですね」
もしかしたら、藍の爆弾発言は、この人の魔の手が及んだ結果なんじゃないかと、拓郎は本気で疑っていた。