蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
9 【鼓動】
季節は大分春めいてきた四月。
この日の夜。
就寝していた拓郎は、暗い部屋の中、隣室で眠る藍のうなされる声で目を覚ました。
隣室と言っても、拓郎は居間のコタツをどかしたスペースに布団敷きで、藍は寝室のベット。襖一枚を隔てただけの隣室だ。
さすがに、ベットで一緒に眠ったのは最初の一日だけで、『こりゃまずい』と思った拓郎が新しく布団を購入したのだ。
最初は『私がお布団で寝ます』と藍は主張したが、夜中や早朝仕事に出ていく事が少なくない拓郎の意見が通り、結局今は、こう言うポジションに落ち着いていた。
バレンタインの夜。
藍からの告白が切っ掛けで、拓郎もようやく自分の気持ちを伝えることは出来た。
だが、だからと言ってすぐに二人の関係が変わるわけでもなく、相も変わらず美奈に発破を掛けられながらも、同居人以上恋人一歩手前状態のままだった。