蒼いラビリンス～眠り姫に優しいキスを～

「ずいぶんと可愛らしい娘だな。この娘を捜したいなんて、喧嘩でもして彼女に逃げられたのか？」


「はあ……。まあ、そんな所です」


原因はともかく、ズバリその通りなので、拓郎は他に言葉が出ない。


「まあ、あまり詮索しないでおいてやるよ。他ならぬお前の頼みだ。無下にも断れまい」


そう言うと藤田は、デスクの引き出しをごそごそと漁り「お、これだこれだ」と一枚の名刺を取り出した。


ほい、と手渡されたその白い名刺に拓郎が視線を走らせると、黒いシンプルな文字で名前が書いてあった。


『瀬谷探偵事務所

瀬谷恭一』


――探偵？


「警察じゃ、ないんですか？」


知り合いの刑事でも紹介してくれるのだろうと期待していた拓郎は、意外な人物紹介に、思わずポロリと本音が出てしまう。