蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

I 県 T 市――。


各種研究機関が集まって出来た、世界的にも注目を集めるな新興の研究都市で、国の研究機関や国内外の大手企業の研究所が、数多く軒を並べている。


『日翔生物研究所』も、そんな研究所の一つだ。


恭一の調査データによると、日翔生物研究所は日翔グループの一研究機関で、バイオ部門、主に『農作物・家畜の品種改良等の研究・開発』を行っている所らしい。


つまり、拓郎が探していたような、医療機関でも無ければ保養施設でもない研究施設だ。


その研究所と藍にどんな関係があるのか。


それは分からないが、とにかく『直に当たってみるしかない』と拓郎は判断した。


実はすっとぼけて、『藍さんを、お願いします』と、研究所の代表番号に電話を掛けてみたのだが、その応対が実に妙だったのだ。


しばらく待たされた後、『どのようなご用件ですか?』と聞かれたので、『友人ですが、急用が出来たので』と答えたら、『そのような方は、在籍いたしておりません』と来た。


いない人間に対しての用件を、普通、聞く必要はないだろう。


それこそ、『そのような方は、在籍いたしておりません』とだけ言えば済むことだ。

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