蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
色々疑問点はあるが、目の前の少女が、真剣に質問していることは拓郎にも分かる。
真剣にぶつかってくる相手には、真剣に答えるのが筋と言うものだ。
拓郎は、そっと藍の両手から自分の手を抜き取ると、真っ直ぐその黒い瞳を見つめて「はい」と頷いた。
家柄がどうとか立場がどうとかで諦められるくらいなら、こんな所まで追いかけて来はしない。
「でも……」
「でも?」
言い淀む拓郎の反応に、藍は、眉を寄せて首を傾げる。
「俺は……。私は『大沼藍』さんに会いに来たのですが、彼女は何処にいるんですか?」
目の前に居る『日翔藍』は、拓郎の知っている藍とは別の人間だ。
それは、確信だった。