蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
エレベターで地下に五階ほど降りるとそこには、一人では迷子になりそうな入り組んだ通路が縦横に走っていた。
研究所の外観からは到底、こんなに広大な建物には見えない。せいぜい『地上四階建ての総合病院』と言った感じなのだ。
でもそれは、全体の一割程でしかないく、外界との連絡路は地下の専用トンネルで直接、麓の幹線道路に繋がっている。
柏木の説明を聞きながら拓郎は、それを可能にしている『日掛』の強大さを思い、慄然とした。
その部屋の入り口には、二人のガードマンらしい男が立っていた。
「所長、そちらの方は?」
白衣を着込んだ拓郎に、ガードマンの訝しげな視線が突き刺さる。
拓郎は内心ヒヤヒヤしたが、柏木はぴくりともその表情を動かさずに、飄々(ひょうひょう)と答える。
「今度のプロジェクトに参加して貰う麻酔医の先生だ。前もって説明しておかなければならない事があるのでね」
柏木の表情は、見事に動かない。
「……了解しました」
ガードマンが道をあける――。
そして拓郎は、柏木と少女の後に続き、その部屋に足を踏み入れた。