蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
拓郎は今まで、藍の過去や境遇について、あえて聞きただそうとはしなかった。
それはいつか、彼女が自ら話してくれるまで待っていればいい、そう思っていたからだ。
――そんな悠長な事を言ってないで、無理にでも聞き出していれば良かったんだ!
そうすれば少なくとも、今のこんな状況にはならなかった筈だ……。
たった一人で、こんな重荷を背負って生きて来たのだろうか?
一番近くにいながら、俺は藍の一体何を見て来たのだろう?
初めて会った時、その妖精のような儚いイメージに被写体として強烈に惹かれた。
初めて人物を撮りたいと思った。
思いのほか頑固で、融通の利かない性格で、イメージとのギャップが可笑しかった。
向けられる邪気の欠片もない笑顔――。
いつしかその笑顔は、一番の宝物になった。
純粋に、ただ「守ってやりたい」と思った。
一緒に生きて行きたい
そう思った――。