蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
これは、フェイントだ。
藍色のイメージが、一気にパステルピンクに様変わりしてしまった。
「ごめんよ、もしかして、今まで元気がなかったのって、腹、空いてたせい?」
そう言う声も、笑いを含んでしまう。
「すみません。私、昨夜から何も食べてなくて……」
昨夜から、と言うことは、やはり家出をしてきているのか。
「俺も丁度、腹ぺこだったんだ。何か食べようか」
にこやかにそう提案する拓郎に、藍がおずおずと口を開く。
「あの、でも私、お金が……」
「ああ。心配しないで、俺のおごり。しがない売れないカメラマンだから、モデル代はそんなに弾めないけどね」
こうして、珍妙なカップルの朝食タイムが始まった。