蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~


――ほかほかご飯に、豆腐とワカメのみそ汁。焼いた鮭に大根おろし。


甘い卵焼き。付け物。


頼んだ和風朝食セットは、空腹なことを割り引いても、とても美味しかった。


誰かと食事を一緒に取るのは、久しぶりだな……。


拓郎は、ファミレスの味気ない料理が妙に美味しく感じるその訳を、不思議な気持ちで考えていた。


目の前には、実に美味しそうに食事を口に運ぶ藍の姿がある。


在り来たりだが、食事は一人で取るより誰かと一緒の方が美味しい――。


それは、拓郎が忘れて久しい感覚だった。



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