蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

日掛藍が満面の笑みで答える。

そして藍を引き寄せ『ぎゅっ』と抱きしめると、顔をシャンと上げてきっぱりと言った。

「さあ、行きなさい」

その瞳には、真っ直ぐと拓郎と藍を見詰めていた。

「これでお別れよ。いい? 幸せになるのよ。誰にも負けないくらい。じゃないと私、おちおち眠っていられないわ!」

黒い瞳が、涙の粒を含んでキラキラと輝く。

その瞳。

その顔。

その声。

その存在の全てを、忘れない。


決して、忘れなはしない――。


拓郎も藍も、それぞれの心の中でそう固く誓った。





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