蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
22 【脱出行2】
時間は、午前零時を回っていた。
「用意はいいね?」
メディカル・ルームの木製のドアの前。さすがに少し緊張気味の柏木の言葉に、拓郎と藍は無言でゆっくりと頷いた。
藍達は入れ替わり、今正にこの部屋を出て行く。
いよいよ始まる『脱出行』。
その成功に、藍の未来が掛かっている。
もし、日掛藍のコールド・スリープ完了前に捕まれば、日掛源一郎の絶対的な力で移植手術が成されるだろう。そうなれば、拓郎だとてどんな危険が及ぶか分からない。
日掛藍の決意を無にしないためにも、拓郎達は絶対ここから逃さなければならない。
嫌が応にも、緊張感が高まって行く。
まずは、二十四時間体制でクローン体である藍を監視するために、この部屋の前に張り付いているガードマン二人をやり過ごさなくてはならない。
研究所の所長である柏木も一緒だし、拓郎もいる。
大丈夫。
私は、『日掛藍』。
誰がどこから見ても、完璧にお姉ちゃんに見える……はず。
藍は、そう自分に言い聞かせるが、鼓動のドキドキが止まらない。
今にも口から心臓が飛び出してきそうになって、ギュッと胸を押さえた。押さえた指先が、緊張でスウッと冷たくなって行く。
「大丈夫。上手く行くよ」
拓郎の掛けた声に、藍が拓郎の方へ顔を向けた。