蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
3 【撮影会】
朝食の後、公園に戻って『撮影会』を始めたのだが、これがなかなか上手く行かなかった。
藍は拓郎がカメラを向けると、とたんに全身がちがちに緊張してしまうのだ。
「う~ん……。そんなに構えないで!」
「は、はいっ」
拓郎は、肩を上下させて『リラックス!』と藍にジェスチャーを送った。
だがその言葉に藍は、よけいに緊張して身体が強ばってしまう。
「自然にしてていいから、適当に散歩してみて」と、軽く言ってみるが、藍はどうしてもカメラの方が気になって、ちらちら見てしまうのだ。
あげくは、同じ側の手足が同時に出てしまい、足がもつれてコケそうになって、拓郎を慌てさせた。
はぁ……。
拓郎は軽く溜息を付くと、気持ちを入れ替えて、ファインダー越しに藍の姿を捉え直した。
淡いオレンジ色のワンピースに、上質そうなシンプルなブラウンのコート。
腰まで伸びた、自然なウエーブの掛かった茶色い髪。抜けるように白い肌。スレンダーなボディ。
美人と言うよりは、可愛い感じの顔立ち。
そして何よりも拓郎を一番惹き付けたのは、その独特な雰囲気。
だが、今目の前にいるのは、引きつり笑顔も痛々しい、緊張を絵に描いたような女の子だ。
自然にしていてくれるのが、一番良いんだよなぁ……。
拓郎は、思わず心で呟いた。