蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
「何故ここにいるのだね? 何をしているんだ!?」
だんだんと詰問口調になりながら、つかつかと藍達の方に近付いてくる。
万事休す。
岡崎は拓郎の名前まで覚えている。誤魔化しきれない!
その時、岡崎の後ろを追ってきた柏木が、ヒョイと、自分の足で岡崎の足を払った。
「ぬわっ!?」
言葉にならない声を上げながら、スローモションで細身の体が空を飛ぶ。
「走れ、藍!」
岡崎が藍達の足下にスライディングしてくる派手な音と、拓郎の叫び声が綺麗に重なった。
「何をするんだ柏木所長!?」
岡崎の怒声が、大音量で響き渡る。
「ああ、申し訳ない。つい蹌踉(よろ)けてしまって。運動不足ですかね?」
至極落ち着いたトーンの柏木のセリフを奪い取る勢いで、岡崎が喚(わめ)き立てる。
「何を言っているんだ! まさか、あれはクローン体の方なのかっ!? 柏木所長、君は何をしているんだ!?」
そんな遣り取りを背中に聞いて、藍と拓郎は文字通り、脱兎のごとく駆けだした。