蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
柏木に前もって指示されていた、職員用の通用口から外に出る。
外は、正に闇夜だった。
分厚い曇に覆われた暗い夜空には、月どころか星一つさえ見えない。
四月にしては冷たい湿気を含んだ空気が、必死で走る体に纏わり付く。
はあはあと息が上がる。
自分の鼓動だけしか聞こえない。
中庭の桜の花が満開に咲き誇る中、薄暗い街灯の明かりだけを頼りに、一目散で出口を目指す。
普段は使われていない西の門。そこの先は細い山道になっていて、車では追ってこられない。
門を出れば、何とかなる。
「藍、もう少しだ、がんばれ!」
弾む息の下藍は、「はい!」と、力強く頭(かぶり)を振った。