蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
24 【脱出行-4】

激しく揺れる視界の先で、深い闇に、懐中電灯の小さな明かりが頼りなげに踊る。

その明かりに照らし出された山の木々が、急に強まった冷たい風に煽られて、不気味に枝を揺らしていた。

「きゃっ」

かなり足下が悪い。

藍は何度もこけそうになって、そのたび拓郎に支えられる。

極度の緊張と苦しい息の下、繋いだ手から伝わる温もりだけが、唯一の道標(みちしるべ)だった。

この道は、研究所が建つ前からあった古い山道で、今はほとんど使われていない。

幅は二メートルにも満たないだろう、かなり急勾配の下り坂の道には、街灯など立っているわけもなく勿論舗装もされていない。土のままの山道だ。

道の両脇は針葉樹林になっていて、木々が、ぎりぎりまでその太い幹を張り出させて、不気味な陰影を浮かび上がらせている。

まさに『原生林』と呼べそうなくらい、人の手が入っていない自然のままの山林だった。

研究所のメイン道路は、専用の地下道になっていて、一キロほど下の幹線道路に繋がっている。

半年前、藍が研究所から逃げ出した時に使ったのもそっちの地下道で、藍が西門のこの山道に足を踏み入れたのは初めてだった。




 
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