蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
「大丈夫か!? もう少しだから頑張れっ!」
叱咤(しった)する拓郎の声に、藍は声を出して答えることが出来ずに、ただ頷き返した。
苦しい――。
心臓が、口から飛び出しそうにこれでもかと悲鳴を上げている。
酸欠で、こめかみがガンガンと不平を鳴らした。
不意に、そのどれとも違う突然の違和感が背筋を走り抜ける。
何?、この感じ。
足だ。足が可笑しい。
湧き上がった言いようのない違和感に藍は、思わず眉をひそめる。
膝から下の感覚が可笑しかった。
動いているのかすらよく分からない、まるで麻酔を掛けられた時のような感覚が、足先からじわじわとせり上がってくる。
「うっ……」
急激に強くなって行くその感覚に、思わず呻き声が漏れた。
何? 足が、痺れて……る?
急激な運動の為なんかじゃない。
それは、明らかに藍の体が発する異常のサインだった。