蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
源一郎は、がっくりと肩を落とすと、ソファーに崩れるように座り込んだ。
「申し訳ありません。これ程の技術とスタッフを集めて頂きながら……。私の、力不足です」
そう言うと、柏木は深々と頭を下げた。
それは確かに予定していた行動だったが、この老人への謝罪の気持ちが含まれているのも確かだった。
「…いや、お前の、責任ではあるまい……」
源一郎は、力なく呟いた。
柏木には、源一郎の反応が意外だった。
もっと、激高するだろうと思っていたのだ。
怒りを買い、ある程度の処分を受けるのは、覚悟していたのである。
こう言う状況になった今、彼の専門家としての知識は失うことは出来ないが、感情とは又別物である事も分かっていた。
――この老人も又、人の親だと言う事か。
事業を託す人材を損失したことよりも、たった一人の孫娘を失った悲しみが勝るか……。
「それと、お嬢様からこれをお預かりしています。もし自分に何かあったら、渡して欲しいと言われて……」
そう言って柏木は源一郎に、一通の白い封筒を手渡した。
それは向日葵の描かれた、白い封筒――。