蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
1-再会
「自分が所長をしている研究所に来ないか?」
大学時代に世話になった恩師から、そう誘いがあったのは、夏も終わりかけた九月も後半。
ちょうど柏木浩介(かしわぎこうすけ)が、自分の仕事に疑問を持ち始めていた時だった。
その頃彼は、とある大学病院で外科医をする傍ら、大学の講師として教鞭を執っていた。
もちろん、自分の研究も続けてはいたが、勤務医と大学の講師、その隙間を縫っての研究では、 『何もやっていないよりはまし』と言った程度だったのだ。
生活の為には、どちらも辞める訳にはいかなかった。
だから、この申し出は願ってもない事ではあったのだ……。