蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
3-禁断の研究
客室を与えられて、そこに泊まることになった浩介は、ソファーに座り込んだまま身じろぎもせずに、ただひたすら衣笠の言葉を反芻していた。
――つまり、こう言う事か。
――私は、ここ日翔生物研究所に、病床の衣笠所長の後任として呼ばれた。
その仕事の内容は、表向きは日翔グループ・バイオ部門の研究施設、「日翔生物研究所」の所長。
だが、実際は、日翔藍」の、
彼女は先天性の内臓疾患を持っていて、何もしなければ、恐らく二十才までは生きられない……。
彼女のクローン体「大沼藍」を使っての、臓器移植プロジェクトの総責任者。
「今はまだ、あの子達は幼すぎて、臓器移植の時期としては、早過ぎる。
源一郎には、彼は私の幼なじみでもあるんだが……そう言ってある。
実際、そう言う側面もあるんだが、本当は、私がやりたく無いんだよ……」
本当ならクローン体は、あくまで臓器保存用の器として、実験施設の中で管理していればいい。
名前など付ける必要も、人間として教育する必要もない。
だが、産まれて来た命を目前にした時、自分にはどうしてもそれが出来なかったのだと、そう言って衣笠は力無く笑った。