蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
4-別れ
翌日、一睡も出来ずに考えた末、浩介は、衣笠の申し入れを受けることにした。
それを伝えた時、衣笠は嬉しいと言うよりは何故か、申し訳なさそうな複雑な表情を見せた。
「ありがとう、恩に着るよ」
そう言うと、深々と頭を下げる。
「やめて下さい! さぁ、頭を上げて」
頭を下げたままの衣笠の背に手を当てた浩介は、その余りの細さに、衣笠の病状が末期状態であること悟らざるを得なかった。
「ただし、ひとつ条件があります。
ちゃんと治療を受けること。
もし、それを聞いて下さらないのなら、この話はお受けすることはできません。
いいですか?
私はあくまで、教授が留守の間の代理の所長です。
病気をきちんと治して、早く戻って来て頂かないと、困りますからね」
そうきっぱり言う浩介に衣笠は、例の『悪戯を咎められた子供のような顔』をして、
「はい、分かりました先生」
と、右手をちょっと挙げて、おどけて見せた。