蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
なんで、こんな気持ちになるんだろう?
拓郎は、自分の気持ちが不可解だった。
たまたま思い立ってここに写真を撮りに来た自分と、たまたま居合わせた藍。
二人は今日、偶然出会ったに過ぎない。
明日になれば、お互い思い出すこともなく過ごして行けるはずだ。
なのに、なんでこんなに別れがたい気持ちになるのか、良く分からない。
「はいこれ、バイト代。少なくて申し訳ないけど……」
拓郎が差し出した茶封筒を、藍は嬉しそうに受け取った。
本当はもっと弾んでやりたかったが、如何せん拓郎には持ち合わせがなかった。