蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
ゆっくりと振り返った藍の顔を見た瞬間、そんな理屈はどこかへ消えてしまった。
藍の頬に光る綺麗な光の粒。
あんなものを見てしまったら、放ってはおけない――。
「泊まる所がないんなら、取りあえず俺の所に来るかい? あまり綺麗とは言えないけど、宿泊無料で夕飯付き!」
見開かれた藍の瞳に、驚きと確かな喜びの色を見付けて、拓郎は純粋に嬉しかった。
それが、行く当ても無いのだろう藍に対する、単なる同情心から出た言葉だと拓郎自身もよく分かっている。
だが、このまま藍と別れずに済むことが嬉しいこの気持ちもまた、偽りのないものだった。