蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

「温かい……」


ほっとしたように、顔をほころばす。


車の暖房は効いていたが、コートを着ているとはいえ、さすがにワンピース姿では足下が冷えたのだろう。


それに、今日は朝から一日、モデルとして歩き回らせてしまったから、疲れてもいるはずだ。


「遠慮しないで、足、崩して。それじゃ、すぐ痺れるよ」


「あ、はい、すみません。初めてなので勝手が分からなくて……。でも、とても温かいですねこの暖房器具」


「え!?」


――コタツを知らない!?


初めて来た部屋で緊張しているのだとうと思っていた拓郎は、藍の言葉に驚く。


緊張しているのではなく、藍は文字通り『もの珍しかった』のだ。


「コタツ、使ったことないの?」


「はい。あ、『コタツ』って言うんですね、これ」


日本の庶民の暖房器具は? と問われれば、コタツだと拓郎は答える。そのコタツに縁の無い生活って言ったら……。

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