蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

「あり合わせだけど、どうぞ」


トンと、コタツの天板に置かれたのは、えび茶色のラインの入った大きな白いどんぶり。


茶色いスープの中には、黄色い縮れた麺とキャベツに半熟の落とし卵。その上には綺麗に小口切りされた長ネギがこんもりと乗っている。


仕上げは、スイートコーンのトッピング。


味噌風味の何とも言えない香ばしい匂いが、熱々の湯気と共に立ち上って食欲中枢を刺激した。


藍の顔に『うわ……、美味しそう』と言う表情が浮かぶ。


今にも『ぐう』と催促をする腹の虫が聞こえて来そうだった。


「インスタント・ラーメンだけど、もしかして初めて食べるとか?」


笑いを堪えつつ質問する拓郎に、藍が至極真面目な顔で答える。


「はい。初めてです。スパゲッティは良く食べましたけど」


「ホントに!?」


冗談半分に聞いた事が的を射ていたことに、思わず拓郎の声がワントーン上がった


「はい」


ニッコリと『いただきます』をして、拓郎が猫舌用に用意したみそ汁のお椀に小分けしながら、藍は少しずつ麺をすする。


瞬間浮かんだ『美味しい』の表情に拓郎はクスクス笑いが止まらない。

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