蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
一緒に……寝る?
って言ったよな、今。
ぱちぱちとぱちと、ゆっくり瞬きをする間拓郎は、藍の言葉の意味を理解しようとした。
理解しようとしたが、理解不能だった。
「……それは、いくら何でも、マズイでしょう? 一応これでも、男だからね」
――冗談じゃないぞ、おい。
真面目に、お縄頂戴はゴメンだ。
ははははっ、と引きつり笑いをしながら行こうとするその腕を藍が、はっしと掴む。
「でも、風邪を引かれては私が嫌です。困ります、ここに居て下さい。私、気にしませんから!」
華奢な手で腕をぎゅっと掴まれた拓郎は、無理に振りほどくことも出来ずにその場に固まった。
――いや、俺が気にするんですけど……。
今までの行動を見てきて、これは藍が自分を女として誘っているのでは絶対無いということは分かる。
いっそそうなら、『冗談言うなよ』と跳ね退けられるのに――。
その瞳に宿るのは、純粋に拓郎の身を案じる善意。
拓郎は軽い目眩を覚えて、何者かに救いを求めるように板張りの天井を仰ぎ見た。