蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
5 【部屋の灯り】
やけに温かい。
ぬくぬくする。
ここの所、こんなに温かい感覚で目覚めるの、久しぶり……。
ぱちり。
目を開けると、茶色い板張りの天井が見えた。
「あれ……?」
藍は一瞬、自分がどこにいるのか分からずに固まった後、がばっと飛び起きた。
忙しなく視線を巡らせるとそこは、見覚えのないシンプルなモノトーンの和室――。
枕元にある出窓の淡いグレーのカーテン。
そのカーテンの隙間から、朝の明るい日差しが木漏れ日のように部屋の中に降り注いでいて、まぶしさに思わず目を細める。
敷かれている暗いグレーの絨毯上のセミダブルのベット。
藍は、そこに座っている自分をぼんやりと見詰めた。
大分多きいサイズの、男物の青いパジャマを着ている。
袖丈が長いため、すっぽりと隠れてしまった手を、顔の前でパタパタと振ってみた。
「あ……」
人の良さそうな青年の、優しい笑顔が脳裏に浮かぶ。
――ああ、そうか。
寝ぼけた頭にがやっと血が巡り、昨日のことを思い出した藍は、隣で寝ていた筈の『家主さん』の姿を探した。