蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
「恵ちゃん、今度はお絵かきしようか?」
「うん、しゅるしゅるっ♪」
自分が考えに沈んでいる間に、いつの間にか仲良しになったらしい孫娘と、もしかしたら息子のように思っている青年の大事な人になるかも知れない少女に、君恵は穏やかな笑みを向ける。
「そうそう。家にね、芝崎君が仕事先で拾って来た猫ちゃんが二匹いるのよ」
「猫ちゃん……ですか?」
藍は、きょとんと目を丸くする。
「そう、雄と雌、二匹いるの。家に来たときは弱々しくて今にも死にそうだったんだけど、今じゃ大きくなって凄いジャンボ猫になっているけど。良かったら、今度見にいらっしゃいな」
「はい。ぜひ!」
「はい、じぇひっ♪」
本当に嬉しそうに『コクン』と頷く藍の仕草を、恵が真似をして『コクコクコク』と相づちを打つ。
人見知り気味の孫娘が、短時間でこんなに他人に懐くのは珍しいことだ。
相通ずる所があるのかもしれない。
「じゃあ、善は急げね。お昼は家で手巻き寿司パーティーでもしましょうか」
嬉しそうにはしゃぎ合う娘達の様子に、思わず、君恵の顔に笑みがこぼれた。