蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
君恵の言葉に甘えて、と言うよりは強引に昼食のお招きに預かった藍は、拓郎のアパートの部屋が全部すっぽり入ってしまいそうに広い、大家宅の居間にいた。
二十畳の和室の一角に置かれた、大きな家具調コタツ。
そのコタツの指定席だという座布団の上に『デン』と横たわる、コロコロした丸いフォルムの二匹の生き物は、猫と言うよりは良く肥えた狸を思わせる。
拓郎と出会った公園で見かけた『ヒマラヤン』もかなり大きな猫だったが、こちらの方が毛足が短い分、余計に肉付きよく見えた。
「大きい……ね」
思わず正直な驚きの言葉が口を突いて出る藍に、恵が案内係よろしく二匹の紹介を始めた。
「えっとね。茶トラが、『ちゃーちゃん』で、黒いのが『クロスケ』って言うの。ちゃーが女の子で、クロスケが男の子なの」
――茶色いから、ちゃーちゃん。黒いから、クロスケなのかな。
なんて分かりやすいネーミングだろうと、思わず藍の口の端が上がる。
「よろしくね。ちゃーちゃん、クロスケくん」
藍が手を伸ばしてそっと頭を撫でると、猫たちは気持ちよさそうに喉をゴロゴロと鳴らした。
可愛い――。
そして、とても温かい生き物。