蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
美奈にとっても拓郎は、弟のようなものだ。
不器用なくせに変にお人好しで、その上意地っ張りでカメラ馬鹿の、少し困ったヤツではあるが、それでも大事な家族。
君恵が見てきた拓郎の姿を、娘である美奈も同じように見てきたのだ。
今まで温かい家庭という物に縁が薄かった分、これからは幸せになってもらいたいと心からそう思っている。
「男の人として……」
藍は、自分に問いかけるように、美奈の質問を反芻した。
好きか嫌いかと聞かれれば、好きだと思う。
だけど。
一人の男性として好きかと聞かれたら、藍には即答出来ない。
正直言って、分からないのだ。
異性に対する愛情というのがどんな物なのかが。