風になる
それから2週間ほどで涼也の容態は悪くなり、携帯を操ることは難しくなった。

ある日たまきにメールが届いた。


「千花です。にいにが携帯触るの無理やから、私に持っていてくれって・・・。」

涼也は無菌室にいるとの報告を受けたたまきはそれでも毎日1通ずつ明るいメールを送り続けた。
季節外れの朝顔を見つけた話。珍しい雲を見つけた話。おもろい看板を見つけた話。・・・

毎日それは千花の手によって大きな紙に書き写され、無菌室の透明な壁越しに涼也に示された。

免疫がなくなって口内炎でぼろぼろになって、何も食べられなくなっても、涼也は千花に詳しい病状をたまきに教えることを禁じた。

やがて骨髄移植をすることになった涼也。
転院することになって、久しぶりにたまきにメールした。

「メールありがとう」

これが、涼也からたまきへの最後のメールになった。
     





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