無口なカレシの愛し方
無口なカレシの愛し方
私の好きな人は無口なんです。とても。
もの静かで大きな身長の彼はなんだか森の大木みたい。ほら、ずーっと昔から森を守ってる主みたいな。あんな感じ。
そんな彼に惹かれてる私はさしずめ森の小動物か。
昔から寡黙なタイプが好きだったけど、彼に恋してしまったのは3ヶ月前、昼休みの事。
混んでいた社員食堂で偶然相席した私と彼。それまで『週に1、2度喋る程度のただの同期』だった私の中の彼のポジションは
「西島さん、これあげる」
静かに掛けられたその一言から変わった。
うどんセットを食べ終え席を立つかと思われた彼が、ふいに私の日替わりランチ(デミオムライスだった)のトレーに何かを乗せてきた。
大きな手からそっと置かれたそれはポップなカラーの包装紙につつまれた小さなチョコで、「ん?」と不思議そうな顔をした私に
「疲れてるかなと思って」
それだけ言い残して、彼はうどんセットのトレーを持って立ち上がりいなくなってしまったのだ。
残された私はスプーンを握りながらしばらく考えた。
疲れてる……。うん、私は確かに疲れてるな。今日の午前中はお客様からのクレーム対応で県外まで車を飛ばしさっき帰ってきたばかりなのだ。然るべくしてヘトヘトなのだ。
なるほど。彼はそんな私のヘトヘトな姿を見て哀れんだのでチョコをくれたんだな。
何故チョコなのか、たまたま持っていたからなのか、それとも『疲れてる時は甘いもの』って考えなのか。そこまでは分かんないけど。
なんだ。優しいじゃん、寡黙な同僚。
そんな、とってもとってもちっこい事がきっかけで、私『西島 りんか』は『風間 優吾』に恋をした。
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