無口なカレシの愛し方
不器用な優しさってのが好きなんですよ。私は。
無口な優吾は本当に口数が少ないので、私は彼との会話から本心と意図を探る事を毎日の楽しみとした。
一年前、同じ新卒として大型インテリアショップに入社した私と優吾。
販売部門の私はさりげなく彼の所属するデスク部門の注文を多く受けるようにし、何かと理由をつけては優吾に接近した。
「風間くん。このデスク、去年のシリーズまだ扱いある?」
「あるよ」
「風間くん。Aメーカーの天板って素材なんだっけ?」
「ナラ」
短いな、本当に。
けど、決してそっけなくはないのがミソだと思う。
優吾は言葉を交わすとき必ず私の方を向いてくれるんだ。そこがとてもいいと思う。
あまり進展のない会話な気もするけど、それでも私は彼の少ない言葉から心を見付けていく。コツコツとドキドキと。
「風間くんてどうしてここに就職決めたの?」
お客さんの少ない平日午前。巡回を装いつつデスク売り場でレイアウトの変更を黙々としていた優吾にさりげなーく話し掛けに行った。
優吾はしゃがんでいた体勢からすっと立ち上がりこちらを向くと、軍手を外した大きな手でポンポンと手元のデスクを叩いた。
「好きだから」
そう短く言い切ってニコッとした顔は、言い表せないくらい可愛くって優しそうで。
「私も、好き」
思わず下心を籠めて、そんな返事をしてしまった。
私が好きなのは家具よりキミなんですけどね。気づいてくれないかな。
なんて、なんて。恋心はますます燻って、私はもっともっと優吾が好きになっていく。