無口なカレシの愛し方
優吾が誘ってくれた焼き鳥屋さんは、どこぞの地鶏を炭火で丁寧に焼き上げたとっても美味しいお店だった。
賑やかなお店のテーブル席。優吾と向かい合ってネギマを食べ日向夏サワーを流し込む。
「美味しい、すっごく。お肉が甘い」
口元が綻ぶほど美味しい焼き鳥を堪能する私を見て、優吾も嬉しそうに微笑んだ。
「西島さん、通だね」
「え?なんで?」
「焼き鳥、塩で食べる人は通なんだよ」
追加で運ばれてきた皮とモモのお皿を私の前に差し出しながら、優吾は楽しそうに言う。
「風間くんも塩派?」
「もちろん」
彼なりの親近感のあらわれを会話に勝手に感じ、私はご満悦。
距離、縮まってる。いいぞいいぞ。
ニコニコと目を細めてモモ串を食べる優吾を眺めながら、私もパリパリに焼き上がった皮串を口にした。うわー美味しい。
ふたりで舌包みを打ち和んだのはいいけれど。やっぱ焼き鳥は色恋を進展させるにはちょっと不向きだったかもしれない。
そう思ったのは香ばしい匂いが充満のお店を出た瞬間だった。
私、燻されてる。
自分のあちこちにしっかり染み着いた焼き鳥の匂い。美味しそうだけど色気からは程遠くなった。