*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
「…………………は?」






藤波は思わず、無遠慮な声を上げた。




息吹の発言が、すぐには理解しがたい内容だったからだ。





しかし当の本人は、自分の世界に入り込んでいる。






「精霊が俺に惚れるーーーそうなれば、禁断の恋が始まってしまう。



精霊は人ならぬ力を持つ者だ。


もし俺がその愛を拒めば、精霊は怒り狂い、俺だけでなく青羽山の皆にも危害を加えるかもしれない。



仲間思いの俺は、そんな危ういこと、できないんだよ………」






悲痛な声で涙ながらに語る息吹を、汀と藤波はきょとんとした顔で眺めるしかない。





そこで、天城が助け舟を出した。






「…………あのな。



俺たちのお頭ーーー息吹は、とんでもなく自意識過剰な自己陶酔者なんだ。


自分の美しさと強さに絶対の自信を持っていて、全ての行動の判断基準は、それなんだ」






「……………はぁ?」







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