*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
「お前さんの姉さんは、いくら頭が弱いとはいえ、ちょっとここらじゃ見られないくらいの美人だ。



青羽山の盗賊たちは、女に飢えた野郎ばっかりだからな………。


こんな美女が一人で牢に入っていたら、すぐにも手篭めにされちまうだろう」





「……………」






天城の遠慮がちな言葉の内容に、藤波は蒼くなった。





(………だから、俺が用心棒役になっていたほうが安心、ということか)





藤波は心配そうな目で汀を見たが、本人は何も気づかずに、いつも通りのほほんとしている。





(………白縫山では、女子どもに手を出すなと群雲がきつく皆に言い聞かせているから、そんな心配はなかったけど。



そうか、盗賊っていうのは、本当はそういうものなんだよなぁ………)






今更ながらに、白縫党の頭領として君臨している群雲の偉大さを思い知り、藤波は感嘆の吐息を洩らした。






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