*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
息吹と天城が去ると、藤波は疲れたように座り込み、土壁にもたれかかった。





汀は興味深そうな様子で牢の中をうろうろしている。






「…………ねぇ、汀。


ちょっとは落ち着いたら?」





呆れたように藤波が言ったが、汀は探索をやめる様子はない。





「あら、だって、牢の中なんて、罪を犯さない限りはめったに入れるものじゃないのよ?



こういう貴重な機会に、しっかり見ておかなきゃ、きっと後で後悔するわよ!」






「…………いや、しないよ」






あっけらかんと言う汀を見て、藤波は諦めたように溜め息をついた。







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